ウトウ 〜北海道天売島で子育て観察〜       

                                      じいちゃん先生レポート
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ウトウの子育て

 まだ肌寒い夕暮れ時。日が暮れると同時に、1羽、2羽と次々に飛来する海鳥たち。気がつくと、いつの間にか大空をたくさんの鳥たちが飛び交い、頭の上を越えては着地する。
子育て中のウトウの大帰巣の始まりである。
 「海鳥の島」と呼ばれる天売島。ウミガラス(オロロン鳥)などさまざまな海鳥を見ることができる。北海道の北西に位置する小さな島(周囲約12km)だ。市町村は苫前郡羽幌町。人口は400人ほど。
 人は少ないが海鳥は多い。そして、世界最大のウトウの繁殖地である。

 オロロン鳥に期待してひとりで島に来た初日、観光バスのドライバー兼ガイドのkさんにウトウを案内してもらう。(観光バスは旅館で依頼できる)
 あたりはもうすっかり薄暗くなるころ、海からウトウたちが帰ってくる。水中にもぐるため、羽は小さくなっており、もぐることに比べると飛ぶのは苦手。海面からはるか100mは高い断崖の上に飛べること自体、驚きを感じる。降り立ったウトウは、すぐ足元でウロウロしている。かなりの数であり、うっかりつまづかないか心配になる。

 場所は赤岩展望台の付近。島で一番高い土地になる。暑寒別天売焼尻国定公園に指定されている。

 赤岩付近のウトウの巣穴。10m四方に200ほどの密度で巣があるそうだ。5月末から7月中が繁殖期で、この時期のウトウは島にいるが、普段は海上生活をしている。
 訪れたのは5月末だったので、ヒナはほとんど誕生していなかった。

 
 ウトウの数は推定60万羽とも100万羽といわれている。全世界に生息するウトウの30%がこの小さな島に生息している。

 何羽かは、嘴(くちばし)に光を放つ魚をくわえている。あちこちに走り回り、自分の巣の中にすばやく姿を隠す。そうしないと、ウミネコに魚を盗られるからだ。魚はイカナゴ。10匹から20匹内外くわえていたが、多いものでは40匹もくわえて帰ってくるそうだ。
 こんな近くでこのような様子を見ることができるのはここしかないであろう。

 このように、天売島のウトウ繁殖地は想像していた以上に大きかった。島に鳥たちの天敵がいないこと、エサとなる魚が豊富なことなど、鳥の繁殖に適した環境がいまだに残っているからだ。
 天売の環境ゆえに繁栄を続けてこられたのか。しかし、天売でしか繁殖できなければ、それはとても脆弱な繁栄なのかもしれない。オロロン鳥のように。

文・写真:じいちゃん先生
撮 影 :平成18年5月末

公 開 :平成19年8月24日

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