栃木県真岡市にある井頭公園は、僕のお気に入りのフィールドのひとつ。初めて訪れたのはリス狙いだったけど、リスに会うのは難しい。しかし、冬はいろんな鳥がいて楽しめる。

 トラツグミもたっぷり観察できた。ネイチャーセンターの方のお話だと、目の前にいても逃げないんだとか。教わった場所周辺に到着すると、針葉樹の林の縁でなにやら地面をがさ後そしている鳥を発見。ツグミよりも大きい。そーっと近づくと・・・・。
 あ、トラツグミ!
 

スズメ目ツグミ科  大きさ 30cm  
 分布 東アジア、シベリア、ニューギニア、オーストラリアなど。 日本全国に分布し、漂鳥または留鳥。積雪のある地方や高地のものは、冬は暖地に移動する。北海道では夏鳥。
低地の雑木林や公園の林から亜高山の広葉樹林などに生息。冬は落ち葉をひっくり返しながら、土中の昆虫の幼虫、ミミズなどを食べる。夜中にヒーィ、ヒーィ、チィーと細い声で鳴き、地鳴きはガッ、ガッ大型ツグミ類中、最も大きい。
ウォッチングのコツ・・・雑木林や公園の林などで観察できる。暗い場所にいることが多く、下草のない冬が良い。ガサッ、ガサッと落ち葉をどかす音で気づいたりするので、いそうなところでは足音を忍ばせて歩こう。暗がりでは見えにくいかもしれないが、他のツグミよりも大きいので、それっぽい鳥がいたら、しばらくじっと観察しよう。そのうち姿を見せてくれるかもしれない。

 林床が好きな鳥。がさごそと林の中から音がすると、それは生き物からのサイン。夏はトカゲやヘビ類が多いけど、冬は圧倒的に鳥が多い。たいていはシロハラやアオジ、ツグミだったりするが、たまにトラツグミの場合もある。ツグミ類では最も大きく、トラ模様もわかりやすい。数は少ないけどいさえすれば見つけやすいだろう。

 鵺(ぬえ)をご存知か?
 80年代に『悪霊島』っていう映画があった。そのCMは女性の声で
「鵺(ぬえ)の鳴く夜は恐ろしい」という怖~いナレーションが入る。ほんとに怖いCMだった。恐ろしすぎてとても 映画は見れなかったが・・・・・。
 この鵺(ぬえ)
『平家物語』(1300年前後)にも登場した、日本古来から語り継がれてきた伝説の生き物だ。顔はサル、胴体はタヌキ、手足はトラで尾はヘビ、そして鳴き声はトラツグミという。おぞましさを通り越して、なんかこっけいな生き物にさえ思えてしまう・・・・くらいに恐ろしい・・・・。

 実は、「鵺(ぬえ)の声で鳴く得たいの知れないもの」がいつの間にか鵺(ぬえ)と呼ばれるようになったらしく、本来、鵺(ぬえ)とはトラツグミのことだったらしい。

 今回紹介するトラツグミ、深夜に不気味な声で鳴くので、正体不明の恐ろしい化け物として昔から信じられてきたのだ。
 

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井頭公園 井頭公園管理事務所
〒321-4415 
栃木県真岡市下籠谷99番地
TEL0285-83-3121(代
93.3haの広大な公園。大きな井頭池には水鳥が集う。コナラ・クヌギ・アカマツなどの丘陵地と雑木林が広がり、野鳥観察によい。プールやバラ園、高山植物館、花ちょう遊館などの施設もある。
野鳥など生き物の情報などは、「緑の相談所」に立ち寄り確認しよう。
詳しくは井頭公園ホームページを参照

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撮影 : 栃木県真岡市・井頭公園 (平成20年2月)

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トラツグミ

 ところでかんじんの鳴き声だが、フィー、フィーと細い声で鳴くそれならば、夜の森でよく聞いた。はじめは繁殖期のシカかと思ったが、細さと抑揚のなさで鳥と気づいた。「悲しげ」とか「寂しげ」と図鑑などで表現されるその声は、言われてみるとなるほど、とも思えるが、僕にはそんなに陰気なイメージには聞こえない。カジカガエルの声と同じく、夏の風物詩だ。蒸し暑い夜にすがすがしい涼しさを運んでくれる、ほっとする音だったりする。

 これがどうして、遠い昔から恐ろしい化け物と信じられていたのか?
 きっと人と自然との距離は時代によって変化する。自然に対し、「畏れ多く、敬うもの」なんて感覚が僕らには少なすぎるのだろう。

 でも・・・・・フィー、フィーという夏の夜のその声がトラツグミなのかどうかは確かめたことがない。というか、確かめることができない。だから僕がトラツグミの声を聞いたことがあるとは言い切れなかったりする。

 もしかして、ほんとに鵺(ぬえ)だったりして・・・・とかすかな希望が混じっていたりもする僕なのであった。

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公開:平成20年2月20日

現地施設

 いつ会ってもたいていは藪の中。近づいても近づいても、追いつきそうで追いつかない。そーっと逃げていくトラツグミ。夜中に鳴き声と追っかけっこでもしたら、それは不気味な化け物と思われても仕方ないかもしれない。でも、昼間のトラちゃんはちょっと違うぞ。ご覧の通り、とてもかわいいのだ。不気味な声がこの姿と重なっていれば、(ぬえ)という名の化け物は存在しなかったかもしれない。

 たしかに人を恐れる気配は少ない。
 よく観察してみると、落ち葉を上手にどかしながら、土中にクチバシを突っ込む。ミミズや虫類を食べているのだ。

 暗い林の中の撮影は苦労する。ISOを400から800に上げるが、それでもぶれぶれの写真が多い。ジッとしていることも少ないのだ。

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