オオマシコ

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 「ほかの人がやっているから、すっかり餌付けされているんだよ」とおじさんは無邪気だ。たしかにオオマシコはすぐに撒いたエサにやってきた。ほかにも何人かのおじさんたちが餌付けをしている。なりふりかまわずという人もいれば、何をしているか気づかないほどさりげない人もいる。
 「あの木の、あの枝にとまるところを待っているんだ」というおじさんが、鳥のいない枝に向けてカメラを構えていた。その木の下には撒かれたエサがある。どうやら鳥と触れ合うためというわけではないらしい。よい写真を撮るための手段が餌付けなのである。その執念には感服するが、写真を何よりも優先するのはちょっと窮屈な気がする。・・・・おじさん、いかがか?

 写真の個体は若いオスか。赤みがだいぶ出ており、おでこが白くなっている。草の実(花?)などを食べている。

 エサは穀物類。隣で撮影していたおじさんと「なかなかいいところに降りてくれませんねぇ」なんて話をしていると、「秘密兵器があるんだよね」といってジャンパーのポケットからなにやら取り出した。そしておじさんは、すばやく開けた草むらにそれを撒いた。「なんですか?」と聞くと粟(あわ)やヒエだという。

 成熟したオスの赤は、見事としか言いようがない。赤い体に、おでこあごがこの鳥の特徴であり、ベニマシコなどの近似種との見分けるポイントとなる。
 なかなか会うことができない鳥なので、観察地が知られるとあっという間に人が集まる。最盛期は過ぎていたが、それでもざっと20人〜30人の人たちがオオマシコを見るために集まっていた。僕もその中の一人だ。


 鳥との付き合い方もいろいろあるもんだ。自分ではまるでやる気がなくても、餌付けに便乗している僕みたいな人もいるだろう。ともかく、珍鳥に人がたくさん集まる観察地では、どうしても鳥に集中できなくなる。そんな時は「鳥をとりまく人びと」を観察してみるのも面白い。

 今年もオオマシコはかの地にやってくるのだろうか?
 もしオオマシコが今年やってきても、昨年のようにたくさんの人が集まらなければ、たぶんひもじい思いをするに違いない。それもなんだか気の毒である。
 冬鳥のシーズンを迎え、そんなことをあれこれ思いながら、この記事をアップする。
 

 小川で、水浴びをするオオマシコ。真冬の川で・・おおさむ・・
 しかし、なんともかわいい姿で、楽しませてくれる。鳥のことを知らない通りすがりのおばさんたちも、赤い鳥の姿を見つけると大騒ぎ。「かわいい鳥がいるわよーほれほれ、あそこ!!」同行のおじさんが、「あればオオルリっていうんだ、たしか。」と、知ったかぶりをしているのがほほえましい。
 

bunbuku
スズメ目アトリ科 大きさ 14〜17cm 冬鳥 分布  日本には冬鳥として全国に飛来
 オスの成鳥は、きれいな赤い体色で、前頭やくびなどが銀白色に輝いて見える。メスはほのかに赤みがかった褐色。群れで生活し、同じ場所に飛来することが多い。冬鳥として飛来するが、数は少ない。北海道では繁殖している。 平地、林、山地などで、樹木や植物の種子を採食する。
 ウォッチングのコツ・・・毎年やってくるポイントがあるので、ネットなどで調べてから出かけるのが確実。今回紹介する場所は、いつもはやってこないところだったので、いろんな鳥屋さんのブログなどで取り上げられた。珍しい鳥はあっという間にネット上に情報が流れる。鳥はそういう方法で情報を入手することがけっこう多い。
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 群れで行動しており、さっと数えただけでも20羽はいただろうか。日中は何ヶ所かの餌場を回っているようで、そこで待ってさえいれば確実にやってくる。
 
 すぐ目の前までやってくるのにはわけがある。写真撮影のため、カメラマンたちがたくさんのエサをあげていた。餌付け(えづけ)である。
 当初は「すぐにいなくなる」と言われていたようだが、人々の予想に反し、オオマシコたちは一冬をこの地で過ごした。エサがたくさんあったからだと思う。
 

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 平成18年から平成19年にかけての冬は、ふだんはなかなか見られない冬鳥たちが、平地にたくさんやってきて話題となった。つくばオオマシコもそんな例で、渡来地に集まった鳥屋さんたちは、こんな近くで見られるなんて、と一様に驚いていた。
 ほんとはこういう情報をタイムリーに流せれば良いのかもしれないが、あえてシーズンが終了してからアップすることにした。

撮影: 平成19年1月〜2月 茨城県つくば市 

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(公開:平成19年11月19日)

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