ナガレタゴガエル 2008春D・ついに産卵編
bunbuku
カエル目アカガエル科 大きさ 38mm〜60mm 分布 近畿・中部・関東・北陸 |
渓流のある森林で生活。非繁殖期は、森林で過ごし、秋になると渓流に入り、そのまま冬を越す。繁殖期は2月〜4月で、流れの少ない淵に集まってくる。特徴的なのは、繁殖期に皮膚がたるむこと。越冬と繁殖期を長く水の中で過ごすために適応したと見られる。生息がなかなか確認されないため、生態はまだなぞに包まれている。新たな生息地もまだ今後発見されていくと思われる。 |
ウォッチングのコツ・・・生息地を特定することはなかなか難しいが、生息地ではけっこうな数が見つかるはずだ。オスは冬に渓流に入って繁殖期の春まで過ごすが、ウォッチングするならば産卵期直前の2月から3月が良いだろう。石の下や流れの緩やかな深い淵などで丁寧に探してみよう。 |
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深場に産まれたばかりの卵を発見する。
やがて一粒ずつにばらばらに分かれ、下流に流れていくのだろう。
時期も場所も過酷過ぎるナガレタゴガエルの産卵・・・・・。でも、それゆえに近年まで発見されずに生き延びてきたのだろう。
ほんとに不思議なナガレタゴガエル・・・・・。いつまでもこの地で生き続けて欲しい。
※5回という長い連載だったが(げろげろっ)、実はまだ終わりではない(ごめんなさい)。次回は08年春の最終章、ナガレタゴガエルの天敵についてアップしようと思う。
げろげろげろげろげろっ!
↑ ナガレタゴガエルの卵
はるばる東京の奥地まで5回も通ったのである(前年までの通った回数はとうに忘れた)。会えてよかった。我ながらよくがんばった、というのが素直な気持ち。
予想通り、ナガレタゴガエルの卵はよどみの底にばらまかれるように産み散らかされていた。予想通り、というのがさらに僕を興奮させる。「やっぱりな」と一人つぶやく。
さて、卵・・・・・。かなりの量だ。そして他のカエルと比べ、塊の中の卵の数は少ないが、一粒一粒はずいぶん大きい。形状はタゴガエルにそっくりだ。
そして卵の周辺に目を向けてみると・・・・・・。
いた! 親ガエル。 ・・・・しかも、産卵中?
(以下の写真はすべて水中撮影です)
撮影 : 東京都(平成20年3月16日)
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1週間がとても長かった。
前回の様子からナガレタゴガエルはまちがいなく卵を産んでいるだろう。産卵を見ることができなくても、卵は高確率で見られるはずだ。
ところで、ナガレタゴガエルはどこに産卵するのだろうか? 近似種のタゴガエルは岩の隙間に卵を産みつける。ナガレタゴガエルも、タゴガエルと同じく岩の隙間に卵を産みつけていれば、かなり見つけにくいはずだ。でも前回、前々回の観察では、ナガレタゴガエルは川のよどみにたくさん集まっていた。もしかすると、深場に卵をばらまいているのではないか? だとすれば卵は容易に見つけられる。
しかし・・・・前日は大雨。川が増水していれば卵も流れてしまっているかもしれない。弱気と強気が入り混じる中、僕は一人で沢の上流を目指す。
水量は・・・・・・増水していない! 卵が見つかるまで帰らない、とひそかに誓う。天に祈る気持ちで1番目のポイントをのぞく・・・・・・。
げ・・・・。
な、なんと、卵どころか、ナガレタゴガエルは1匹もいない。げろげろ、だ。
どういうことだ? 産卵は終わり、卵は流れてしまったのか?
ふと気がつくと、僕は上流ではなくて、下流に向かっていた。流れた卵や死んだカエルを探してみよう、と思ったのかもしれないが、自分でもはっきりしない。でも、結果として下流に向かったのは大正解だった。
あった・・・・のである。ナガレタゴガエルの卵が。
ゲロ吐いたゲロ子を発見したげろ。
でも、このゲロ子はすでに死んでいる。
オスにきつく抱きつかれての圧死だ。
げろっ!
さらに上流で、いつものポイント。
ここでも産卵中のカエルたちが2組。
ばらばらに散乱している卵が写っているのがわかるだろうか?
深場の水中撮影なので、写真はクリアではないが、水流や動く親ガエルによって、固まって産み付けられた卵はばらばらになっていく。そして、このまま流されるものや、この深場に残るものもあるのだろう。
一生の中で一番無防備で危ない産卵を集団でしのぎ、同じく危険が多い孵化(ふか)は、広域に散らばる。これがナガレタゴガエル独特の、生存のための戦略なのだろう。
いや、産卵だけではない。真冬の冷たい渓流の仲で冬を越すオス、雪の早春に沢を下るメス・・・・。そして不思議なべろべろに伸びた皮膚。すべてがしたたかでたくましい彼らの戦略だ。
bunbuku
(2008.4.29公開)
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こっちは別のカエルたち。メスのおなかが大きく膨れている。
げろげろげろっ!
げろげろっ!