採集時の様子に話を戻そう。
採集はけっこう苦労する。タモ網の目ではすり抜けてしまう大きさだ。熱帯魚用のネットを持ってくれば良かったと後悔する。それから夕方の採集であったため、小さなツブゲンはけっこう見えにくい。水草ごと網ですくい上げ、黄色い色で探すのだが、採集は明るい時間帯のほうが良いだろう。
生息地は止水でクロモなど5〜6種の水生植物が見られた。同じような環境でも水草がなければ見られない。こんな程度の情報だが、どなたかワタラセツブゲンゴロウに挑戦し、ネットに写真を公開するなり、僕にアドバイスをしてくれるとありがたい。そんな想いでこの記事をアップする。
撮影 : 栃木県藤岡町・渡良瀬遊水地 (平成19年5月26日)
ツブゲンゴロウなのはまちがいない。ようするに、渡良瀬遊水地にはツブゲンゴロウが何種類いるのだろうか?ということだ。1種しかいなければ、写真はワタラセツブゲンゴロウである。
日本には11種のツブゲンゴロウがいるそうだ。このうち新たに加わったのはキタノツブゲンゴロウ、ナカジマツブゲンゴロウ、ワタラセツブゲンゴロウの3種だそうだ。2005年に記載されたばかりだから、ネットにも写真がほとんど出ていない。
思い切って群馬県桐生市のぐんま昆虫の森に出かけてみた。広いホールに大量の専門書が並ぶ図書コーナーがあり、なんかヒントがないかな、と思ったのである。
しかし、大量の専門書から素人が答えを導けるわけはなく、夏休みで忙しそうなスタッフの方におそるおそる声をかける。すると、スタッフの方たちはとてもていねいに対応してくださった。大感謝である。
まずはゲンゴロウの図鑑を中心にツブゲンゴロウを調べるが見つからない。2005年に新記載したらしい、と伝えると、「月刊むし」の2006年5月号を見せていただいた。その号は「2005年度の昆虫界をふりかえる」といった内容で、ついにワタラセツブゲンゴロウの記載が見つかった。
記載自体は短い文であったが、さっとメモした内容を紹介すると、「上手雄貴、疋田、佐藤によりコウベツブ群が再検討され、与那国島nakajimaiナカジマツブゲンゴロウ、栃木・渡良瀬dikinohaseusワタラセツブゲンゴロウが記載された(EL33:617-628)」というものである。
なるほど・・・。さっぱりわからない。だいたいELって何?
「ELはえりとらのことです。にほんしょうしがっかいのきかんしです」
????
「Elytraと書きます。日本鞘翅学会の原著論文誌のことですね」
あーーー、じゃあ、それを読ませててください!
「・・・・・たぶん、ほとんど英文です」
あーーー、(おなかがいたくなってきたので)やっぱりいいです
なんかこんな感じのやりとりをし、他にも渡良瀬固有の昆虫を教えていただいたりした。
ちょっと遠かったけど、思い切って昆虫の森に来てよかった。ほんとうにありがとうございました。
ごあいさつを済ませ、帰る際に「たぶん、あと2、3年したら新しい図鑑にはワタラセツブゲンゴロウも載りますよ」とのこと。
うーーーん、気長に待つとするか。
公開:平成19年8月26日