田は収穫直前の稲。
トノサマガエルなど、関東では会えない生き物たちを楽しみながら、山形を目指す。
チッチゼミはアカマツとツツジのセットとなった環境が良い、との情報を得ていたので、そういう場所を探す予定だった。ところが、山の中を車で走っていると、いきなり「ちっ、ちっ、ちっ、ちっ・・・・」とチッチゼミの声だ! こんなによく響く声で鳴いているのだとはじめて知った。
場所はちょうど自然公園。周辺で大きな池のほとりでアカマツとツツジがセットとなっているポイントを見つける。車の中から、すでに複数のチッチゼミの声が聞こえる。あとは声の出どこを探すだけ・・・・。
声は低い位置から聞こえてくる。どうやらツツジの中だ。2〜3カ所から聞こえてくる中から、1カ所に絞って、そっとのぞき込む。特徴的な黒いセミが見えた。
・・・・いた! チッチゼミだ!!
小さいセミ、と思い込んでいた。 小さいことは事実だが、昆虫としては見つけにくいサイズではない。ただし、チッチゼミにかかわらず、声を頼りのセミ探しはけっこう難しいもの。それゆえに見つけた瞬間はなかなかうれしいものだ。
どうやらオスメスのペアだ。下がオス。僕の気配にメスが移動をはじめ、後ろのオスが鳴きながら追いかけていた。
チッチゼミ
(公開:平成21年1月25日)
カメムシ目セミ科 大きさ 18mm〜23mm 分布 北海道南部〜九州北部 |
チッチッチッと鳴くことからこの名がついた。発生時期は7月〜11月で、最も遅くまで鳴き声を聞くことができる。日本最小のセミで、アカマツや杉、ヒノキの森林にすみ、低木のツツジなどの生木に産卵する。 |
9月初旬の秋田。ひそかに狙っていたのはチッチゼミ。沖縄の種を除けば、日本産セミの中ではもっとも小型種である。発生時期が遅く、9月ごろが旬なはず。僕がフィールドにしている栃木などでは分布が限られており、チャンスはこういう遠征に限られる。
撮影:秋田県美郷町周辺(平成18年9月5日)
ほどなくオスは飛んでいった。でも、メスは逃げない。
置いていかれたメスは・・・。逃げられないのだ。
写真を見ていただければ一目瞭然だが、羽がゆがんでいた。羽化に失敗したのだろう。このメスは空を飛んで自由に移動できない。だから、あのオスとの出会いは数少ない繁殖のチャンスだったのかもしれない。
そう思うとちょっと胸が痛む。