霊長目オナガザル科(日本固有種)  大きさ 雄53cm〜60cm 雌47cm〜55cm 本州〜九州 下北半島と東北のグループは絶滅の恐れが高い地域個体群、ヤクシマザルは準絶滅危惧種(環境庁) 天然記念物(下北半島) U類(CITES)
群れで生活する。世界のサルの中では最北にすむサル。数頭の雄と母子からなる20頭から150頭の群れを作る。雑食性。秋の繁殖期には、顔と尻が赤くなる。子どもは一度に一頭しか生まれない、母子の関係はむつまじい。身近に見られるほのぼのした動物だが、農村では人間の生活域に入り込んだり、地域によって数が増えすぎたりして、駆除されることがある。
ウォッチングのコツ・・・・日光ではいろは坂の上り口から華厳ノ滝、中禅寺湖あたり間での範囲が観察に適しているだろう。観光客からもらうエサを狙って、駐車場周辺にいたりするので、向こうからやってきてくれる出会いも。時間帯は午前中が良いように思う。他にもシカやカモシカ、時にはクマなどの大型哺乳類に出会える可能性もある。   
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ニホンザル3   〜日光の(野生)サル軍団編〜

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撮影 : 栃木県日光市・華厳ノ滝駐車場 (平成17年4月30日)

撮影 : 栃木県日光市・第二いろは坂入り口周辺(平成17年4月30日)

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 日光のサルといえば、東照宮「見ざる、聞かざる、言わざる」や、日光サル軍団が有名だ。しかし、最近では野生のサルたちが何度もテレビで取り上げられ、そちらのほうが有名かもしれない。観光客から買い物袋を奪い取ったり、白い牙をむき出して威嚇する姿が、何度も繰り返し紹介されたので、ご存知の人も多いだろう。時には車中に手を入れて子どもの食べているお菓子を奪う様子なども放送された。「サルって恐ろしい」と思った人もいたはずだ。

 でも、日光のサルはどうしてそんなに恐ろしいサルになってしまったのだろうか?
 いや・・・・。本当に日光のサルは恐ろしいサルなのだろうか?
 今回はそんなテーマで日光のサルをリポートしよう。

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 日光のサルはいくつかの群れがあり、けっこう広い範囲で出会えるのだが、観光客が最も遭遇(そうぐう)しやすいポイントは2箇所といってよいだろう。そのひとつが華厳ノ滝けごんのたき)の駐車場だ。しかし、行けば必ず会えるというわけではない。時期も時間帯も関係しているので、タイミングが合えば簡単に会えるが、僕の場合は会えないことのほうが多い。
 

 この日は午前10時ごろ。連休ははじまったばかりだが、予想していたよりはるかに観光客は少ない。車を停めてすぐ、サルの声が聞こえた。威嚇(いかく)の声だが、近い。するといきなり、おみやげ屋の中からガタンと物音が聞こえ、サルが一匹、勢いよく飛び出してきた。

← 華厳ノ滝(けごんのたき)

 日本の三大名瀑のひとつ。中禅寺湖(ちゅうぜんじこ)の水の流出口にあり、約97mの高さからほとんど一直線に落ちるさまは豪快そのもの。
 固い岩盤をくりぬいてできたエレベーター(有料)があり、間近で滝を見ることが出来る。
 取材の時期、イワツバメがたくさん舞い、ハヤブサが子育てのさなかであった。すぐ近くに栃木県立日光自然博物館があり、いろいろな情報を教えてくれる。

 サルのほか、シカやカモシカなどもわりと目撃されるそうだ。

 ちょっと見えにくいが、黄色い矢印の先に走るサルが写っている。どうやら店でいたずらをしたようだ。
 なんと、そのサルは真新しいお菓子の袋を持っている。これがうわさのどろぼうザルということか。サルは店の脇に座り込んで袋を開け、さらに木の根元に移動。悠然とお菓子を食べ始めた。

 このお菓子は良く知っている。栃木方面では観光地のみやげ屋や高速道路のサービスエリアなどで売っている。実は時おり買っている僕は、サルもなかなかの味覚の持ち主だと感心してしまう。
 それにしても、まさにTVで騒がれているのと同じ状況・・・。日光のサルは確かに人から物を盗む。

 どろぼうサルを撮影しているうちに、なんだか後ろが騒がしくなる。おっと、サルの群れが集まってきた。全部で5匹くらいしか見えないから、さほど大きな群れではなさそう。そしてサルに気づいた人たちが、群れを取り囲み、こちらでも撮影会。サルよりも人のほうが多い。そして、サルと同じくらい外国の人たちがいる。
 ちなみに上の一枚は白いジャンバーの外国人に向かって、矢印のサルが飛びかかろうとする瞬間。この後、白ジャンバーのおじいさんはあわてて逃げて事なきを得た。
 確かに日光のサルは好戦的だ・・・・・。

↑ 飛び出してきたサル(黄色い矢印)

↑ 盗んだお菓子を食べる!

↑ それでもサルは人気者!

 日光のもうひとつのサルポイントは、いろは坂上り口周辺だ。
いろは坂は下りが第1いろは坂、登りが第2いろは坂となっており、それぞれが一方通行。もともとカーブが48あり、いろはにちなんで名づけられた。その第1いろは坂と、第2いろは坂が二手に分かれる(下りの場合は合流する)付近で、比較的大きな駐車場があり、そこがポイントだ。観光客目当てのサルの群れがよくやってくる。
 この日は駐車場にサルはおらず、坂を上り始めたところでサルの群れに遭遇した。順番が前後したが、この群れの撮影後に直行した華厳ノ滝で、先に紹介した群れに会っているので、いろは坂の下の群れと、華厳ノ滝駐車場の群れはまちがいなく別のものだ。

 いろは坂のサルは、次々にやってくる車にまるで関心がないかのように、道路わきで休んでいた。しかし、直前までサルたちの周辺に観光客がいたのだろう。観光客にもらったと思われるお菓子を食べているサルがいた。
 このサルにとって、人間とはエサをくれる存在に他ならない。観光客の餌付けがはじめにあって、人間はエサをくれると信じたサルたちが寄ってくる。そして、人間との距離を保てなくなったサルたちが人間を襲う・・・・。サルが人間からお菓子を奪うのと、人間がサルにお菓子をあげるのと、はたして今の日本ではどちらが多いのだろうか?
 かつて、人間が森を削り、道路を作り、奥へ奥へと移り住むようになったころから、人間とサルの関係が変わってきた。べつにサルが変わったわけではない。

 ふと見ると、首にテレメトリーをつけたサルがいた。電波を発して、居所を知らせてくれるので、ほ乳類の生態研究でよく使われている。サルの場合、テレメトリーをつけたサルが近づくと知らせてくれるので、このシステムを猿害防止に役立てようという試みが各地に広がっている。ここ日光でもその試みをしているのだろうか。
 いずれにせよ、この地には、サルの立場でがんばっている人間もいるということだ。

 群れの中に、小さな子ザルを連れた母ザルが何匹かいた。この母ザルも子を育てるために必死に生きている。

そしてこの子ザルも必死で生きていくことだろう。

 日光のサルは特別なサルなのだろうか? 
 すくなくとも僕には他の地で出会うサルたちと同じに見える。

 子ザルの瞳をよく見て欲しい。近い距離での撮影は、この瞳に撮影者の姿が写っていることがある。僕の姿が写っているか、ということではない。一度で良いから、子ザルの瞳をしっかりのぞき、そこに写っている人間を見つめて欲しい。

(日光のサル対策について)
日光市では、全国に先駆けて
サル餌付け禁止条例平成12年4月1日に施行された。
その内容は「何人もサルにえさを与えてはならない」というもので、違反者に罰則等は設けられていないが、悪質な場合は「氏名等を公表できる」、とある。
第1条の目的を紹介すると、
「この条例は、野生の喪失により、咬傷害や、商店及び人家への侵入等を繰り返し市民の生活環境を脅かしているサルの問題に関し、野生喪失の主原因であるサルへの餌付け行為について禁止を宣言することにより、サルが本来の野生状態で生息できる環境を整備し、もって人間とサルの適正な関係を実現することを目的とする」となっている。

(公開 : 平成19年7月14日)

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