僕の立っていたところをよろめきながら駆け抜けた次の瞬間、どん、と大きな音がした。僕のすぐ後ろに止まっていた車に激突したのだ。

 よく晴れた日曜の昼下がり、渓流沿いの県道を、ヤマセミを探して車を走らせる。大きな左カーブの先に車が数台止まっていた。事故か、と思いブレーキを軽く踏んだ直後、異変に気づいた。何かが見えた。たぶん大型の獣だ。
 ・・・・・牛みたい。ということはカモシカか、と思いながら車を止めると、その獣が走り始めた。やっぱりカモシカだった。

白い眼のカモシカ 1 (2007.12.6公開)
白い眼のカモシカ 2 (2007.12.6公開)

(2007.12.6公開)

そして突然、崩れ落ちた・・・・・・。
後ろのほうから小さな悲鳴が聞こえた。時が止まった日曜の昼下がり。
不吉な予感が当たった・・・・。

 よろけながら走り出したカモシカは、コンクリートの壁にどすんと激突し、ふらふらしながら僕のほうに向かってきた。
 パニックを起こして前方が見えていない獣の進路に入っている。コースを空けなければ正面衝突だ。逃げながら僕はシャッターを切る。同時に、不吉の影は大きく膨らむ。カモシカは右鼻から出血していた。
 誰かが「車にぶつかったのよ」と言った。・・・・そうかもしれない、と僕は思った。

bunbuku

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なぜ、こんなところにいるんだ? 何があった?
走り方が弱々しい。ただならぬ気配の中に不吉な影を感じ、僕の足はすくむ。

 皆が息を呑んだその時、「あー」と車の持ち主が大声を上げる。
 まったく受身をとらないのだから、かなりの衝撃だったに違いない。車は傷ついていないようだが、カモシカは確実にダメージを受けていた。今にも倒れそうによろめきながら、足を引きずってふたたび前へと進む。その時、「汚れちゃったよー」とさっきの男性の声。振り向くと車についたカモシカの血を拭いていた。

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 白い眼のカモシカは車道へ飛び出す。走っているのだろうが、体は上に跳びあがってばかりで、なかなか前に進まない。

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白い眼のカモシカ・その1
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ぐるぐる回りながらも、カモシカの動きはどんどんにぶくなっていく。

 カモシカは車道の真ん中をゆっくりと、ぐるぐる回り始めた。どうやらまっすぐ進めないようだ。あっという間に何台もの車を止めてしまった。

・・・・・・眼が白い。このカモシカは目を患っている。

 目の前に飛び出してきた。車に取り囲まれ、明らかに逃げ場を見失っている。左下に写っているのは僕の車だ。
 すぐ脇の垣根を越え、ふたたび戻ってきたとき、不吉の影がくっきり見えた。

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平成19年11月 栃木県鹿沼市

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